税負担の国際比較(税・社会保険料の規模)

日本の一般政府支出は国際的に見ても小さいが(こちらの記事参照)、収入の規模についてはどうなのか?ここではOECDの統計を利用して各国における一般政府の税負担(税収)の規模および社会保障拠出(社会保障のための収入)の大きさをみる。

ここでいう「社会保障拠出」とはsocial security contributionsを日本語に訳したものである。OECD統計におけるsocial security contributionsは、「(条件付きの)将来の社会給付(social benefit)を受け取る権利を与える、一般政府へ納められるすべての強制的な支払い」と定義されている。例えば、日本では、支払っている年金保険料によって将来受け取れる年金額が変わるほか、医療保険料を支払っていなければ、公的な医療負担を受けられなくなり、全額自己負担となる可能性がある。またこれらは強制的に徴収される。このような社会保障受給権と関わる強制的な支払いは、ここでいう「社会保障拠出」に含まれることになる。また、会社側が行う負担も含まれる。

※OECDによるsocial security contributionsの定義についてはOECD (2017), Social security contributions (indicator)による

1.近年のデータ

以下で各国の税・社会保障拠出の規模を見てみよう。

税・社会保障拠出の合計の対GDP比を見ると、デンマーク、フランス、ベルギー、フィンランド、イタリアなどの国が最も税・社会保障拠出が大きい国々に属する。一方、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどのアングロサクソン諸国は税・社会保障拠出の小さい国々に属する。そして日本の税・社会保障拠出は対GDP比で32%であり、イギリスやカナダなどの水準に近い。つまり、日本の税・社会保障拠出の規模は国際的に見ても小さい(OECD平均値は34.2%)。

「2014年」と記載したが、実際には各国の会計年度の数字であるので、日本では2014年度の数字である。日本では2014年4月より消費税率が5%から8%へ引き上げられた。したがって、これは消費税増税分を反映した数字となっている。つまり、消費税率の8%への引き上げの後においても、日本の税・社会保障拠出の規模が小さいことを意味する。

今度は税と社会保障拠出に分けてそれぞれの規模を見てみる。

税収の対GDP比を見ると、日本の税収の水準は国際的に見て非常に小さいことがわかる。OECD加盟国平均が25.1%であるのに対し、日本は19.3%であり、大きな差がある。なお、消費税増税前である2013年度の日本の数字は18%である。したがって、消費税率が仮に10%になったとしても、日本の税収の水準はOECD加盟国平均よりも相当に低い水準にとどまると予想される。

一方、社会保障拠出の規模を見ると、日本のその水準は反対に大きいことがわかる。大きな政府であるスウェーデンよりも大きく、フィンランドと同程度の水準となっている。OECD加盟国平均が9.1%であるのに対し、日本は12.7%である。

このように日本の一般政府歳入を見ると、税・社会保障拠出の規模は全体として小さいが、具体的には税負担が極端に小さいと同時に、社会保障拠出は大きいという特徴を持っていることがわかる。言い換えれば、社会保障拠出は大きいものの、税負担が非常に小さいことにより、全体としての歳入規模は小さくなっていると言うこともできる。

日本の政府債務は国際的に見て極めて大きいことが知られている。日本の一般政府の歳出が大きくないことを考えると、政府債務が大きく累積していった要因は、「無駄遣いなどで歳出が非常に大きい」ということではなく、歳入、とりわけ税収が特に小さいということに求められそうである。

2.時系列のデータ

今度は長期的な時系列データで税・社会保障拠出の規模を見てみる。

税・社会保障拠出の合計の規模について時系列で見ても、日本のそれはアメリカやオーストラリアを並んで歴史的に一貫して小さかったことがわかる。つまり、歳入規模が小さいという日本の特徴は、近年に始まったことではなく、歴史的に一貫してそうであった。ただし、日本の税・社会保障拠出の規模は近年上昇しており、OECD平均の値に接近している。

税と社会保障拠出を分けて見ると、日本の税収の規模は歴史的に見ても、国際的に見て特に小さかったことがわかる。日本の税収規模が最も大きかった時期は80年代末のバブルの時期であり、近年の消費税増税を経ても、その時期の税収規模よりは小さいこともわかる。

一方、日本の社会保障拠出はほぼ一貫して増大しており、近年の規模は60年代と比較すると3倍以上となっている。その結果、日本の社会保障拠出の規模は国際的に見ても大きい程度にまで達したことがわかる。

以上のことから、日本の税・社会保障拠出の規模が全体として上昇してきた要因は主として社会保障拠出の増大に求められると言える。

データのソース

(1)税・社会保障拠出の合計の規模は、”Tax Revenue”の中の”Total tax revenue”

(2)社会保障拠出のみの規模は、”Tax Revenue”の中の”2000 Social security contributions (SSC)”

(3)税収のみの規模は、”Total tax revenue”から”2000 Social security contributions (SSC)”を除いた数字

・対GDP比で見るには”Indicator”で”Tax revenue as % of GDP”を選択。その他にも各国の通貨単位などでも表示することが可能

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