社会保障費(公的社会支出)の国際比較

今日における先進国の政府歳出の中で最も大きいものは社会保障関係費である。

一般政府歳出の内訳の国際比較

しかし、社会保障といっても、年金、医療、介護、失業保険、家族手当、障害者福祉など、その内容は多様であり、どの分野にどの程度の支出を行っているかは、各国で違いがあると思われる。ここでは社会保障関係費を国際的に比較する。

社会保障関係費を国際比較する際によく使われるデータは、OECDの「社会支出」(social expenditure)の統計データである。「社会支出」は社会政策的な目的を持つ支出のことであり、社会保障関係費に類似したものであると考えられる。このデータでは社会支出が9つの政策エリアに分類されており、各国がどの分野にどの程度の支出を行っているのか知ることができる。

ここでは社会保障関係費として、OECDのデータにおける各国の公的社会支出(public social expenditure)および義務的私的社会支出(mandatory private social expenditure)の合計を見る。「公的社会支出」は一般政府によって直接的に行われている社会支出であり、「義務的私的社会支出」は、民間セクターによる社会支出であるものの法令によって定められているようなものを指している。ここではこの両者の合計を「公的」な社会保障関係の支出とみなす。

OECD統計の社会支出に関する説明については、OECD[2007] The Social Expenditure database: An Interpretive Guide SOCX 1980-2003が詳しいが、日本語では国立社会保障・人口問題研究所により毎年発行されている『社会保障費用統計』の巻末参考資料内の「主な用語の解説」で概要が説明されており、便利である。社会支出の分類(「高齢」、「遺族」など)についても詳しくはこれらの資料を参照。

まず近年の公的・義務的社会支出合計の規模を見ると、デンマーク、フランス、イタリア、スウェーデンなどの大陸ヨーロッパ、北欧諸国で全体の規模が特に大きくなっている一方、オーストラリアやカナダ、アメリカなどのアングロサクソン諸国では規模が小さい。日本の規模はアングロサクソン諸国よりは大きいものの、ヨーロッパ諸国よりは小さい程度の水準であり、OECD加盟国の平均を超える程度の水準である。日本の社会保障支出の規模は国際的に見て大きくはないが、それほど小さくもないという結果になる。

もっとも、公的・義務的社会支出合計の規模を時系列で見ると、日本のそれは歴史的には小さかったことがわかる。1980年代の日本の社会支出の規模は先進国中で最低レベルであった。それが、90年代以降一貫して増大し続けた結果、2000年代末にはOECD加盟国平均値を追い越し、日本の公的社会支出の規模は国際的に見てそれほど小さくない水準にまで達したことがわかる。

内訳を見ると、どの国においても全体的に大きい項目は、年金、介護など高齢者に対する社会支出である「高齢」(Old age)、および主として医療サービスを指す「保険」(Health)である。多くの国でこれら2分野に対する支出が相対的に大きく、OECD平均値で見ても、「高齢」+「保健」の支出が全体の65%程度に達している。

特に日本では「高齢」+「保健」の占める割合が全体の80%にも達し、公的な社会保障の大部分が高齢者向け支出および医療で占められていることがわかる。中でも「高齢」はOECD平均やG7平均を大きく上回っており、国際的に見ても大きい水準に達していると言える。これは先進国中で最も人口の高齢化が進んでいることが影響していると考えられる。

一方、障害者関連の支出である「障害」(Incapacity related)や、児童手当や育児休業給付などの子育て支援の支出である「家族」(Family)、職業訓練などの「積極的労働市場政策」(Active labour market programmes)、失業給付などの「失業」(Unemployment)に向けられている支出の規模は日本では小さい。日本の社会保障給付は国際的に見ても高齢者向け支出、および医療に偏っていると言うことができる。

この点、「障害」や「家族」の給付はデンマーク、スウェーデンといった北欧諸国で大きな規模になっている。

データのソース

・OECD.Statにおける、” Social Expenditure – Aggregated data”の統計データ
https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=SOCX_AGG

・”Source”の部分で公的社会支出のみ、義務的私的社会支出のみ、公的社会支出+義務的私的社会支出の合計、などを選択できる

・”Branch”の部分で、「高齢」、「障害」などの大きな政策分野を選択できる

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