貧困率の国際比較(相対的貧困率)

日本の貧困率は国際的に見てどの程度なのか?

ここでは貧困率の国際比較を行う。ここでいう「貧困率」とは「相対的貧困率」のことである。

利用するデータはOECDのIncome Distribution and Povertyによるものである。

以下の貧困率のデータは、再分配後の所得、つまり可処分所得で算出されたものである。可処分所得は以下のように算出される。

可処分所得 = 賃金・資産所得などの当初所得 + 年金・児童手当などの現金給付 - (個人に対する所得税・資産税+社会保険料)

その可処分所得を等価尺度で調整した「等価可処分所得」を、それぞれの個人の所得とし、貧困率が計算されている。

具体的には等価可処分所得が同中央値の半分未満の人が相対的貧困者としてカウントされる。

「相対的貧困率」や「等価尺度」の説明に関してはこちらの記事を参照

1.相対的貧困率の国際比較

各国における近年の相対的貧困率を見ると、日本の貧困率は16.1%(2012年)となっており、国際的に見ても高い水準となっていることがわかる。OECD加盟国平均が11.5%、G7平均が12.5%となっており、日本の貧困率はそれらを4ポイント前後上回っている。G7の中で日本を上回っているのはアメリカだけである。

日本を含め、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国など、比較的政府の小さな国で貧困率が高くなっている傾向を見てとることができる。

なお、各国でデータのとれる最新年次が異なるので、平均値も各国の同一年次のデータから算出されているわけではない。

これは全人口で見た貧困率だが、年齢階級別で見ることのできるデータも存在する。

以下では大きく現役世代(18~65歳)、高齢者世代(65歳超)、子ども世代(0~17歳)の3つに分けて貧困率を見てみる。

2.現役世代(18~65歳)の貧困率の国際比較

現役世代の貧困率を見ても、全体的な傾向は変わらない。

日本の現役世代の貧困率は14.5%となっており、OECD平均値やG7平均値よりも3~4ポイント程度高くなっている。

3.高齢者(65歳超)の貧困率の国際比較

続いて高齢者の貧困率を見てみる。

高齢者世代の所得は一般的に現役世代よりも低くなると考えられる。退職している人が多いと同時に、年金を受給している人も、現役時代の収入よりも年金収入は少ないのが通常だからである。したがって、「高齢者の貧困率は現役世代より高くなるのが当然だ」、と考えられるかもしれない。

しかし、実際の各国の貧困率を見てみると、そうは言えないことに注意が必要である。

日本では高齢者の貧困率は19%となっており、現役世代の貧困率(14.5%)よりも4.5ポイント高い数字となっている。日本の高齢者は約20%が相対的貧困者であるということになる。

しかし、国際的には現役世代の貧困率よりも高齢者世代の貧困率の方がむしろ低い国も数多く存在している。

上記の数字で見ると、OECD加盟国35ヶ国中、高齢者世代の貧困率が現役世代のそれよりも低い国は18ヶ国にのぼり、「高齢者の貧困率は現役世代よりも高いのが当たり前」とは全く言えないことがわかる。

むしろ、高齢者の貧困率に大きく影響しているのは、各国の社会保障制度、とりわけ年金制度であると考えられる。

例えば、韓国では高齢者の貧困率が50%近くにのぼるなど、極めて高い数字となっているが、韓国では国民を包括的にカバーする年金制度ができたのが遅く、近年でも年金受給者が少ないとされる(金成垣[2011]「韓国における年金制度と女性」、『海外社会保障研究』 No.175)。したがって、退職後の所得が少ない人が非常に多く、高齢者の貧困率も高い数字となっていると考えられる。

その一方で、年金の受給要件が緩やかで、ほとんどの人が年金を受給できるような国もある。例えばカナダやスウェーデンでは、税を財源とした年金制度が存在し、現役時に年金の保険料を全く払っていなかった人でも、その国に長い間住んでいた、という条件を満たすだけで受給できる年金が存在する。もちろん、どの程度の金額が受給できるかによるが、そのような国では高齢者の貧困率も低くなると考えられる。

4.子ども(0~17歳)の貧困率

「子どもの貧困率」は全ての子どものうち、相対的貧困状態にあるとされる子どもの割合を表す。

ほとんどの子どもは自分自身の所得を持たないが、子どもの貧困を測る時には、子どもの属する世帯の所得を、一定のルール(等価尺度)に基づいて子どもに割り当てることで、それを子どもの「所得」として計算する。

子どもの貧困率を見ても日本は国際的に見て高い。やはりOECD平均やG7平均よりも数ポイント高くなっている。

以上のように、OECDのデータでは、日本の貧困率は現役世代、高齢世代、子どものどの世代で見ても国際的に見て高いという結果になる。

ただし、日本の貧困率は、利用するデータで違いがあることには注意が必要である。OECDの日本の貧困率のデータは、厚生労働省の「国民生活基礎調査」に基づいている。その他のデータとして、総務省の「全国消費実態調査」がある。「全国消費実態調査」のデータによる相対的貧困率は、9.9%(2014年)となっており、「国民生活基礎調査」に基づいた数字(16.1%、2012年)と著しく異なっている。もし「全国消費実態調査」のデータを用いて国際比較をすると、結果も大きく異なってしまう。

どちらを利用するのかは非常に難しい問題であるが、「両調査の相対的貧困率については、どちらの水準が正しくてどちらの水準が正しくないとはいえない」とされている(内閣府・総務省・厚生労働省[2015]「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」)。

データのソース

・右側に現われる表の“Measure”の中から、“Poverty rate after taxes and transfers, Poverty line 50%”を選択すると、可処分所得の相対的貧困率を見ることができる。

・Age groupによって現役世代(18~65歳)、高齢世代(65歳超)を選択できる

・子どもの貧困率(0~17歳)については、Measureの中のAge group 0-17: Poverty rate after taxes and transfersのデータを利用した

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